下咽頭後壁癌T2N1a
下咽頭後壁癌T2N1a

 

下咽頭後壁原発癌で一部右PSへの浸潤が認められた。

77歳の高齢かつ、心肺機能低下のため、咽喉食摘+頚部郭清+空腸移植に耐えられないと判断。

侵襲の少なサイバーナイフを選択した。

 

サイバーナイフ、線量分布
サイバーナイフ、線量分布

 

サイバーナイフの線量分布である。

腫瘍に一致した線量分布が得られている。

声帯の線量が50%以下に抑えられていることは、照射後の声門浮腫防止に重要である。

 

原発巣は3分割照射、リンパ節転移にはSRS(1回照射)とした。

サイバーナイフによる限局した粘膜反応
サイバーナイフによる限局した粘膜反応

 

治療後1週間で粘膜の発赤があらわれ、ついで偽膜性反応に変化する。

3週間で粘膜炎はピークとなり、まもなく偽膜が消え粘膜浮腫が続く。

サイバーナイフ後5ケ月が経過すれば、浮腫も消退しする。

PETーCTにおいても原発巣、頸部転移双方にFDGの集積は認められない。

急速粘膜炎反応は限局性であり、経口摂取が中断されることはなかった。

 

治療後1年7ヶ月、肺転移で亡くなったが、全経過中再発は認められず、CCRTにみられる有害事象(口渇、嗄声、嚥下障害、頸部浮腫など)はなかった。

 

下咽頭癌のサイバーナイフ治療には耳鼻科医の参加が不可欠である。腫瘍浸潤範囲はCT画像だけでは把握できず、内視鏡による詳細な情報が必要となるからである。また、気道に浮腫が生じないような線量分布、線量の設定が求められる。治療後、粘膜浮腫が消えるまでは、気道狭窄に対応できる環境で経過観察する。

下咽頭PC型 T2N2b
下咽頭PC型 T2N2b

76歳男性、肝硬変、薬剤過敏症(特に抗菌剤、化学療法剤)のため手術のリスクが高く、咽喉食摘は適応無しと判断。 頸部多発転移にはサイバーナイフは不適当であり、抗生物質を使用せずに頚部郭清術を試みることにした。 原発巣はサイバーナイフで治療し、CRを得た。しかし、治療後1年半、肺転移のため亡くなった。サイバーナイフの特性を生かしたQOLの維持治療が奏功した症例であった。

下咽頭癌 PS T3N0
下咽頭癌 PS T3N0

  下咽頭癌PS型、T3N0症例。 通常、咽喉食摘、あるいはCCRTが行われる。エビデンスのないサイバーナイフは例外的に用いられており、症例の選択と治療計画(線量分布と線量)が適切ならQOL維持治療に効果を発揮する。しかも通院3日間だけである。

  本症例は、認知症の妻(夫以外には恐怖で凶暴となる)の介護があり、入院を拒否し、長期の通院も困難であったことから、サイバーナイフを提案したものである。

 

下咽頭癌 PS型T3N0 CT画像
下咽頭癌 PS型T3N0 CT画像

 

 

 「下咽頭癌にはサイバーナイフは適応はない」、と多くの放射線治療専門医は自信を持って言う。本当だろうか。適応がないというエビデンスは無い。適応があるというエビデンスもない。しかし、この症例のように、有害事象がなく最小の負担で治っている症例もある。

 

  

  サイバーナイフの辺縁線量をどこに設定するか、CT画像の腫瘍輪郭(分からないことも少なくないが)、からマージンをとるか? 難しい判断が求められる。

 

 

  一側の声帯、披裂部の線量を抑え浮腫による治療後の気道狭窄を防止することが大切であるが、一方で、浮腫を避けるために線量を減らすことは根治の目的から外れることになる。微妙なバランスが求められる。

  

サイバーナイフ後3年経過
サイバーナイフ後3年経過

  

 

  治療後3年、有害事象もなく、入院することもなく、CRで経過した。この間、妻を最期まで看取り、サイバーナイフが最も有効であった症例という印象を持った。

千葉徳洲会病院    http://www.chibatoku.or.jp/

 耳鼻咽喉科

 頭頸部外科センター

  

2013年9月で三田病院を定年退職しました。

引き続き、頭頸部腫瘍(悪性・良性を問わず)を中心に診療を続けます。

サイバーナイフ治療は横浜サイバーナイフセンターと提携し、これまでどおり実施しております。

セカンドオピニオンは随時受け付けております。

 

鎌田信悦 (カマタシンエツ)