三叉神経鞘腫(V2) 35歳 男性

主訴:手術3年前にV2領域のシビレ感にあり。他医にてMRI実施、三叉神経鞘腫の診断。

経過:この3年間で腫瘍の増大を確認、頭蓋内浸潤の恐れがあり、手術に踏み切った。

側頭開頭と頸部外切開によるアプローチを採用した。低侵襲、機能温存(ここでは主として顔面神経機能)かキーポイントとなる。

    

冠状断CTで、腫瘍により菲薄した骨壁がかろうじて維持されていることが分かる。

したがって、副咽頭腔の項で述べた trans-cervical submandibular approach でも、運がよければ摘出は可能である。しかし、翼状突起基部の静脈叢からの出血を盲目的に圧迫止血することは安全な手術とは言い難い。簡単に止血できたとしたならば、それは幸運だったと言えるだろう。確実に摘出するには側頭開頭で硬膜外に側頭葉を挙上し、正円孔、卵円孔を視野に置くことが基本である。

MRI T2画像により、腫瘍浸潤の範囲と周囲の関係を示す。典型的な三叉神経鞘腫で、expansive な発育を示し、周囲への癒着は考えなくても良さそうである。側頭開頭でGasserian ganglionに到達し、 V2を確実に切断し、腫瘍を摘出すること、これが手術の要点である。

「左上図」:皮膚切開は二つの部分に分かれている。術中操作で顔面神経を損傷しないように、耳前部(青矢印)には皮膚切開を入れなかった(次の症例と比較)。

「右上図」:側頭筋を側頭骨鱗部から剥離し、側頭開頭を実施した。

「左下図」:硬膜外に側頭葉を挙上し、腫瘍に到達。

「右下図」:摘出腫瘍(55X30X27mm)

術前画像と比較すれば、何の障害もなく摘出されていることが分かる。顔面神経麻痺は全く出ていない。

頭蓋底腫瘍(悪性にせよ良性にせよ)の手術で重要なことは、"slow and gentle", 時には"timid"であることである。上顎全摘術の勢いで、「止血は圧迫で!」という世界では頭蓋底手術は出来ない。

千葉徳洲会病院    http://www.chibatoku.or.jp/

 耳鼻咽喉科

 頭頸部外科センター

  

2013年9月で三田病院を定年退職しました。

引き続き、頭頸部腫瘍(悪性・良性を問わず)を中心に診療を続けます。

サイバーナイフ治療は横浜サイバーナイフセンターと提携し、これまでどおり実施しております。

セカンドオピニオンは随時受け付けております。

 

鎌田信悦 (カマタシンエツ)